高齢者の睡眠の特徴とは?
目次
- ○ 年を取ってからの、睡眠が変わることは病気なのか?
- ・加齢による睡眠と体内時計の変化は?
- ・高齢者に起こる不眠症と影響
- ・高齢者の不眠の原因は?
- ○ 健やかな眠りをいつまでもするには?
- ・① 日中の時間帯は、日光を浴び、活動量を増やす
- ・② 眠たくないのに、床に入るのは避けましょう
- ・③ 起きる時間を一定にする
- ・④ 食事時間をなるべく同じ時間帯に整え、必要な栄養素を取り入れる
- ・⑤ 睡眠時間にこだわらない
- ○ まとめ
年を取ってからの、睡眠が変わることは病気なのか?
日本の高齢者では約3 割の人が不眠症の割合が高くなっていることがわかっています。
不眠の原因としては、仕事を辞めた・家族との死別・独居などの心理的なストレスに加えて、メリハリのない生活、こころやからだの病気として、狭心症や心筋梗塞による夜間の胸苦しさ、前立腺肥大による頻尿、皮膚のかゆみ、関節の痛みなど眠りを妨げる要素はたくさんあります。
私たちは年齢とともに、体力が落ち、老眼になり、白髪が増えてくるといった身体に変化が起こります。それと同様に睡眠にも変化が起こります。
睡眠は、若い頃と比べると深い睡眠が少なくなり、浅い睡眠が増え、夜中に起きてしまう中途覚醒や朝早く目が覚めてしまう早朝覚醒が多くなって、総合的な睡眠時間の減少などの変化が起こります。これは体内時計が加齢によるものであり、睡眠だけではなく、睡眠に関わる血圧・体温・ホルモン分泌の生体機能リズムにも影響しており、病気や異常でもないので特に心配することではありません。
加齢による睡眠と体内時計の変化は?
加齢による生理学的な変化による睡眠の特徴は判明しつつあります。
終夜睡眠ポリグラフ検査という睡眠中の脳波を調べて、睡眠深さを測定する研究結果から、若年成人と比べ高齢者は、就床してから寝つくまでの時間が長く、途中で起きてしまう回数が増えます。
睡眠の深さはとしてはStage1−2の浅い睡眠が多く、睡眠段階3ー4の深い睡眠が少なく、総睡眠時間は、若年者と比べて1時間ほど短くなり、高齢者の睡眠時間は6時間程度と言われています。
体内時計に影響する概日リズムからも変化を受けており、高齢者の体内時計の変化として、全体的に前倒しになります。深部体温がより早めに低下し、より早い時刻から上昇するようになるため、高齢者では必然的に早寝早起の生活リズムができてしまうわけになります。
また、メラトニンというホルモンが、体内時計による夜間の身体の休息を促す役割があるのですが、高齢者になると、その分泌量が減ってしまうこともわかっており、昼夜の眠りやすさの振幅が減ってしまうことも、夜の眠りを浅くしてしまう要因になっています。
高齢者に起こる不眠症と影響
不眠症とは、睡眠に関する訴えが1カ月以上持続し、日中の疲労、集中力や気力の低下、眠気が伴うなどの定義があります。主な不眠のタイプとしては「眠りにくさ(入眠困難)」、「夜間に目が覚めてしまう(中途覚醒)」、「朝早く目が覚めてしまう(早朝覚醒)」、「寝た気がしない(熟眠感の欠如)」があって、高齢者では睡眠リズムが前倒しになってしまうことや深い睡眠が少なくなってしまうことが、不眠の訴えとしてでてきることが多いと言われています。
実際に不眠に関する疫学調査でも、高齢者の男女の睡眠時間の減少、睡眠効率の低下、中途覚醒がみられており、特に男性で浅睡眠の増加と深睡眠の減少に関連がみられ、女性では睡眠に関する訴え(入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒)が関係していました。
不眠の心身への影響は、抑うつや不安、生活の質の低下があり、この状態が慢性化することで身体・精神活動へ悪影響を及ぼします。特に高齢者にでは、歩くスピードが遅くなったり、握力が低下の関係がわかっており、また、歩き全体バランスが悪くなり、転びやすく(眠剤の影響なしでも)なるということもあるようです。
高齢者の不眠の大きな影響として、注意力や反応時間が遅くなることや忘れぽっくなといった記憶障害で認知機能の低下との関連性が考えられています。
高齢者の不眠の原因は?
高齢者に伴い、心疾患、慢性肺疾患、糖尿病、泌尿器科的疾患、皮膚疾患、整形外科的疾患などの様々な身体にかんする病気をもつことが多くなり、疼痛、頻尿、呼吸困難、搔痒などの症状で不眠の原因になることがあります。
からだやこころに病気をもたない高齢者の不眠の割合は、高齢者全体からみると極めて低いことがわかっています。一般に、高血圧のある方は睡眠障害の可能性が高く、高血圧のある方の約2割に寝つき悪さ、約4割に夜間体に起きてしまうなどの症状があります。また、糖尿病の方も、約4割が何らかの頻回な不眠症状があるようです。
つまり、なにかしら病気があることで不眠症をもたらすリスクが増えてしまうということになります。
また、高齢者は仕事の引退や家族との別れによる喪失体験や社会的孤立などによる様々な心理・社会的ストレスを受けやすくなっており、このストレスが不眠症などの睡眠障害リスク因子になっているとも考えられています。そして、うつ病や認知症になると不眠になる傾向が高いとも言われています。
健やかな眠りをいつまでもするには?
これまでの説明のように、年を追うごとに人間の身体には生理学的な変化は起きてくるものであり、睡眠にも同様に変化が起こるということです。つまり、年齢を重ねると若い頃のようには眠れなくなってくるのは避けようのないことで、逆に眠れないことで生活リズムが崩れてしまうことで、心身に様々な問題が起こってしまうリスクがあるということです。
不眠による健康リスクを高めてしまうことは、睡眠を改善することでリスクを下げることができると考えています。生理学的に眠りにくくなってしまうことはありますが、普段の生活習慣を見直すことで、眠りやすさを変えることができます。
高齢者が睡眠の質を改善する方法を紹介します。
① 日中の時間帯は、日光を浴び、活動量を増やす
日中は出来るだけ太陽の光を浴び、活動量を増やすことをお勧めします。
体を動かしたり、交流の場で話をすることで心地よい疲れが出ることで、夜になると自然と眠気が出て眠れるようになります。これは、睡眠ホルモンである「メラトニン」が関係しており、軽いストレッチやウォーキングなどで、筋肉を緊張させたり緩めたりするリズム運動を行うことで、メラトニンの分泌量が多くなるという報告もあります。また、相乗効果として、運動により腰や膝を支える筋肉の強化を図り、骨や関節を守ることができたり、慢性的な身体の痛みの解消もできます。
また、どうしても日中の眠気は出てしまうものですので、昼寝は午後3時まで済ませて、20~30分程度にしましょう。30分以上の昼寝は、夜の眠りを浅くしてしまい、不眠の原因にもなってしまいます。
② 眠たくないのに、床に入るのは避けましょう
眠くないのに「この時間だから・・・」と無理に眠ろうとしても、眠気がないのであればなかなか寝付けません。むしとストレスになって、余計に眠れなくなってしまうということもあります。その場合は、眠くなるのを待って、寝床に入るようにしましょう。
無理に眠ろうとしても焦るだけですし、眠気が出てから布団に入るという習慣をつけることで、脳も意識的に「布団に入ることで眠る」ということが刷り込まれることになり、良い眠りにつなげることができます。
なので、夕食後は睡眠前の習慣づくりとして、入浴(眠りの1時間半前までに)や読書、家族との会話など時間や趣味などで過ごして、眠気が来るようになってから就寝することをお勧めします。
いつもよりも早く寝るとそれだけ早く目が覚めてしまう可能性もありますし、そこから睡眠リズムが崩れてしまい、自分の思っている睡眠とのズレでストレスと感じてしまい、不眠になってしまうこともあります。
③ 起きる時間を一定にする
基本的には、起きる時間だけは一定にした方が良いです。
たとえ、寝不足気味のことがあったとしても、起きるのは時間は毎朝同じしましょう。その場合、どうしても日中に眠気が強くなってしまう活動を制限してしまうことにつながってしまうので、できれば昼寝の時間を確保することを勧めます。
この場合の昼寝も、午後3時ごろまでに30分以内にしてください。30分以上の昼寝は脳が深い睡眠に入ってしまい、起きてからのパフォーマンスが落ちてしまうことや夜中の眠気を妨げてしまうものになってしまいますので、注意しましょう。
④ 食事時間をなるべく同じ時間帯に整え、必要な栄養素を取り入れる
起きる時間と同様に、食事時間も毎日なるべく同じようにしましょう。睡眠の習慣化を図れるようにすることには時間の管理も重要ですし、睡眠の質を上げるためには、必要な栄養素を取り入れることも効果的と言われています。
良い睡眠には脳や神経をリラックスさせることも必要で、脳や神経をリラックスさせる作用のある成分を多く含む栄養素を多く取り入れることで、より深い睡眠を得ることができるようになります。
睡眠を促す「セロトニン」というホルモンであり、「メラトニン」の元となる物質です。このホルモンには、脳をリラックスさせる効果があり、セロトニン をつくるにためには「トリプトファン」という栄養素が必要になります。
脳をリラックスさせるもう一つのホルモンに「グリシン」があります。また、体温を下げる作用があり、眠りにやすくするという効果があります。
眠りに関係するビタミンとしては、イライラや不安などのストレスを和らげ、神経を落ち着かせる作用や睡眠中の疲労回復促進作用がある「ビタミンB1」が良い睡眠をとるためにとても効果的なものになります。
⑤ 睡眠時間にこだわらない
いろいろな情報から1日8時間の睡眠が必要と考えている高齢者の方が多いようです。
しかし、実際に日本人の睡眠時間は平均約7時間、高齢者では6時間程度という調査報告があります。もちろんこれは調査報告なので、適切な睡眠時間とは言えません。
人間は加齢に伴って、生理機能が徐々に低下するため、睡眠時間が短くなる傾向になるので、無理に睡眠時間を長くするということは難しいです。適切な睡眠時間には個人差があり、しかも季節によって多少の変動がります。
つまり、何時間寝なくてはならないということに拘らないことです。時間よりも、熟睡感を得て、翌日に疲れの残らない「質の良い睡眠」をとることの方が重要であると考えています。
まとめ
今回は、高齢者の睡眠についてまとめてみました。
人の加齢現象は避けられないものですが、その状態に応じた対応を知ることで「質の高い睡眠」を得ることは可能になります。もちろん、これは参考ですが、睡眠について知ることは自身の生活習慣を見直していくことで、安心で豊かな生活を作る基盤になりますので、健康と睡眠の一考としてもらえると嬉しいです。
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